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セーリングのスキルをつけるには?――ヨットレースに参加しよう。 - Sailing Japan and Blue Water
Sailing skills and “Can Racing”. 沿岸部でのブイ回りレースや“Can Racing”は、私にとって“外洋レースのための練習”になると、以前お話したことがあります。 でも、誤解はしないでください。私は、多くの艇長・船員の皆さんがブイ回りレースに本気で取り組んでいることにとても感謝していますし、尊敬もしています。そして、それはとても素晴らしいことだと思っています。私が心配に思うのは、十分な準備やスキルなしにボートで海に出る船員のことです。私たちもブイ回りレースに参加するときは、セーリングスキルを高めるためにできる限り練習を積みます。 ISAF(国際セーリング連盟)のcategory rulesと外洋特別規定(OFFSHORE SPECIAL REGULATIONS)では、ボートは強度があり安定する構造で、安全に航海できるものでなければならないと規定されています。しかし、船員のスキルについてはどうでしょうか?ISAFもトレーニング用の道具についてはいくつか紹介していますが、スキルは安全なセーリングに直結する一番大切な要素なのです。 セーリングスキルを高めるためには、実際の海と同じコンディションのもとでトレーニングする必要があります。そして、帆の揚げ方・下ろし方、タック・ジャイブの仕方を学ぶ必要があります。まずはスピンポールとスピンセールをセットし、水をかけ、それをまた片づける。この練習をすることで、本番も素早く簡単にセールを扱うことができるようになります。ブイ回りレースのビデオや写真には、クルーたちのセーリングスキルを記録したものもあります。それを見てみると、一連の作業をとてもスムーズにやっていることがわかります。でも、まずは自分で実際にやってみることですね。彼らのスキルの高さがわかり、驚くと思います。そして、素早く安全にセーリングするスキルを磨くにはどれくらい練習しなければいけないかということもわかるでしょう。 そう話していたら最近、「でも、そんなスキルを海の上で一人で練習できますか?」と聞かれました。そうやって練習した方がいいのです。そう勧める一番の理由は「スターボード!」という声の存在です。初心者の方ですと、それでいろいろと自由が奪われるからです。 ルール:2つのボートが衝突しそうになったときは、ポートタックがスターボードタックに進路を譲らなければならない。例え計画していた航路を外れることになったとしても、必ず譲らなければならない。 一人で練習しているときはプレッシャーを感じることなく自分のペースでセーリングできますが、ブイ回りレースだとできるだけ速く進まなければならないのと、たくさんのボートが同じブイを同じタイミングで回ることになるので、自分の好きなように動くことができなくなります。そうしたくなくてもマークのあたりで方向を変えないといけなくなりますし、もし自分たちがポートタック側のときに「スターボート!」という声が聞こえたら、その進路から外れるしかないのです。そうしたくなくても、進むための準備が万端でも、すぐにどかなければなりません。ブイ回りレースだと、様々なことがあなたのタイミングで進められなくなります。様々なことがそのレースや他の船によって決められるのです。「スターボード!」と言われたらすぐにどかなければならない。だからあなたは常にセーリングスキルを磨き、いつでもタックまたはジャイブができるようにしておかなければならないのです。 一方、外洋でセーリングするときは、自然のコンディションに左右されます。いつ何をするかもそのときのコンディションによって決まることが多いのです。天候、コース、ナビ、クルーの安全、ボートの安全、岸に着くまでクルー全員が食べられる分の食料と水も計算して乗せなければなりません。スクリューやボルト、シャックル、ランギングリギン、セーリング用品など…それらが傷ついていないかも常にチェックする必要があります。ここで考えなくてもいいようにしておきたいのがセーリングスキルです。必要なスキルは頭や体に染みつけておく。特に基礎基本となるスキルは使いこなせるようにしておかなければなりません。私にとっては、こういったスキルを身につけるのに一番いいのは、自分よりもスキルが上のヨットと, ブイ回りレースで競争することなのです。私はレースで最下位になることはたくさんあります。前のボートとそれほど差がつくわけではないですが、それでも最下位です。もちろん私もできるだけ1位に近づきたいと思いますが、それほどこだわっているわけではありません。だって、他のボートに接触することなく安全にコースを回れて、なかなか良いタイムで、笑顔で終われて、しかも……新しいスキルが身につくのですから。私は今まで身につけたスキルのおかげで、海の上で安全にセーリングできているのです。
Mark Smith Japan